根室北部2023春カモメまとめ


3/25から4/27まで約1ヶ月間、根室北部を通過するカモメを観察してみました。思っていた以上にカナダカモメが通過していて興味深い結果となりました。

〈各種の渡りの規模感〉
セグロカモメはやはりかなり少なく、よく見る日でもぎりぎり10羽いく程度でした。多いのはシロカモメで、3月中旬から下旬にかけて風蓮湖や野付湾に沢山やって来て、そこから4月が終わるまでダラダラと小、中規模の渡りが続きました。ワシカモメは多くなく、4月を通して各漁港に2.3羽居るか居ないかという感じが続きました。カナダカモメは3月下旬から4月中旬まで定期的に出て、最終的に6羽が見れました。北風の日が出やすい傾向な気がしますが、まだまだ母数が少ないので何とも分かりません。モンゴルセグロカモメは4月下旬の強い南風の日の直後に7羽が観察されました。普段から根室北部を通過しているのか、偶々南風に流されて来たのか、来年以降に継続してカモメを見て検証したいです。

カナダカモメ
1個体目 成鳥冬→夏羽 3/25.27
25日はハシリコタンでオオセグロカモメ、シロカモメ数羽と共にテトラに降りていた。27日は雨が降るやや風が強い日にハシリコタン港に降りていた。虹彩は淡色で、初列は典型的なカナダパターンの個体。



2個体目 成鳥夏羽 4/9.14
9日に春別川河口のテトラに降りているのを発見し、14日に尾岱沼漁港に居るのを再発見した。初列はp10が真っ白でp9の白色部は外弁まで達しており黒色が入る初列はp10-6の5枚と、クムリーン寄りのパターンだった。体格はかなり華奢で、パッと見のシルエットは小型カモメの様な印象を受けた。
右p6が脱落していたため、他のどこかで見つかっていれば渡り経路が分かりそうなので、もし見覚えがある方はコメント頂けるとありがたいです。




3個体目 成鳥冬→夏羽 4/16
北風の強い雨の日に標津港の堤防に大型50羽ほどが降りていて、その中に混ざっていた。典型的なカナダという感じで、小柄で、斑はぼやっと、脚は短く、目に入った瞬間にカナダと分かった。初列はやや黒色部が多い個体で、p5までがっつりと模様が入っていた。結局、この時しか出会わなかったので、風よけで一時的に港に入ったのかもしれない。



4 個体目 成鳥冬→夏羽 4/16
3個体目と同日に、こちらは春別川河口のテトラに大型10羽ほどに混ざり降りていた。やや頭でっかちな印象を受ける個体で、左目を怪我しているのか目が常に半開きだった。発見直後に飛んでしまい戻って来なかった。飛翔時の翼は撮影し逃してしまった。

5個体目 第3回冬→夏羽 4/17.18.27
17日の標津港で大型100羽ほどに混ざり降りていた。この個体はかなり悩ましい個体で、もしかしたらカナダでないかもしれないが、他の選択肢があまりにも可能性が低いためカナダとした。
前日の昼にオホーツクの湧別港で見つかっており、1日で200kmを渡って来たらしい。また標津港での発見から10日ほど経った27日に再び同所に現れた。今度はどの辺りまでウロウロして来たのだろうか。

この個体の特徴を挙げると、①色味はセグロよりも薄く青みがかっており、典型的なカナダの色味とは異なる②初列のパターンは外弁と内弁にコントラストがありカナダ的なストライプが見られる。内弁は白というより灰色がかっている③尾羽には黒味の強い黒帯模様が残っている④初列風切の突出は長く尾羽からp7-10が出ている⑤嘴がやや長めだがゴツい感じはない⑥アイリングは紫がかったピンクでカナダやワシ的⑦体格は典型的カナダに比べるとがっしりしている⑧脚は短く見える、という感じで①⑦以外はカナダの特徴と一致する。印象としてはワシが絡む雑種にも見えるが、背の色味からワシ雑種なら片親はワシと同等かそれより薄い色のカモメで、そう考えるとスミスやネルソン(スミス×シロ)が片親と推定出来る。これは知る限り記録がない雑種で、存在したとしても日本に来る可能性はかなり低いため、この個体はカナダカモメとした。
(かなり難しい個体で、3日ほど考えた末に色々な方に意見を伺いこの様な結論になりました。またこの個体の考察を別の記事で書くかもしれません。)
↓16日に湧別で撮影された写真(A氏提供)

以外標津港での写真



6個体目 成鳥夏羽 4/22
標津港に大型100羽ほどに混ざり降りていた。昼前から夕方までずっとほぼ同じ場所で寝ていた。長旅で疲れていたのかもしれない。この日以降は全く見かけなかった。2個体目に非常に似ており、華奢で小型カモメの様なシルエットで、ほぼ完全に夏羽に換羽していた。初列パターンはp10に小さい黒色模様があるものの、クムリーンパターン的だった。




モンゴルセグロカモメ
1個体目 成鳥夏羽 4/26
南風がとても強い雨の日に、標津港北側の空き地に大型100羽ほどに混ざり降りていた。体格、嘴の黒斑、突出、ムーンの狭さ、初列の黒色部の広さなど文句の付けようのないモンゴルセグロカモメだった。初列風切の黒色部はp3まで見られた。


2個体目 第二回夏羽 4/26
こちらも上の成鳥と同じ日に見つかった。こちらは午後の最も風が強い時間帯に西部川河口をオオセグロ100羽ほどに混ざり飛んでいた。コントラストが強く尾羽の黒帯が狭く、モンゴルの特徴がよく分かる個体だった。
他にも2羽、西別川河口にモンゴルセグロ2wに見える個体がいたが、翼はおさえられなかった。



↓他2個体の2年目

3個体目 第三回夏羽 4/27
早朝の尾岱沼港の堤防にオオセグロ、シロカモメなど30羽くらいの大型と共に降りていた。
尾羽は黒帯が残り、初列の黒色部はp4までの7枚。
他にも共にモンゴル成鳥と思われる個体が2個体見られた。


↓モンゴル成鳥と思われる成鳥2個体

雑種カモメ
推定シロ×セグロ 3年目冬羽 4/23
4/23の早朝に標津港の堤防に大型30羽ほどに混ざり降りていた。その時は後ろ姿しか見えず、ワシカモメか大きいカナダカモメだろうかと思ったが、夕方に港北側に大型100羽ほどに混ざり降りていて再度見る事が出来た。翼のパターンはワシカモメ的だったが、後頭や雨覆の斑が鋭くワシカモメではないと思われる。嘴の黒色もワシ的でなく、先だけが黒い。背中の色味がセグロ並だった事からワシ×オオセグロも考えづらいため、セグロ寄りのシロ×セグロ雑種と考えられる。多くのシロ×セグロ雑種3wは虹彩が淡色だが、一部暗色の個体もいるらしい。


推定シロ×セグロ 成鳥夏羽 4/23
4/23の午後に西別川河口でオオセグロ30羽ほどと水浴びをしていた。初列パターンはカナダ的だが、体格はオオセグロ並で嘴もがっしりとしておりカナダではないと思われる。背中の色味はセグロより薄く見えた。虹彩が暗色なのが引っかかるが、暗色なシロ×セグロもいるためシロ×セグロと考えた。



その他
タイミルセグロカモメ 第3回夏羽
北風の強い雨の日だった4/16に、別海港にて大型200羽ほどに混ざっていた。背中はオオセグロよりやや薄い程度で、ムーンは小さく、ミラーはp10に小さいものが1つ見られた。ホイグリンとの境が難しいが、体格が小型カモメ的な典型的ホイグリンとは言えずタイミルとした。この様な個体は、根室北部ではあまり見ない。

ワシカモメ
第一回夏羽


第二回夏羽

第四回夏羽



成鳥夏羽

シロカモメ
第一回冬→夏羽

第二回冬→夏羽


成鳥夏羽