2023年11月12日(日)に、野付半島の先端付近の汽水干潟でオオキアシシギ第一回冬羽を発見した。
当日はなんの気なしに野付半島へ足を向けたところ、干潟に何やら中型のシギが3羽走り回っているのが目に止まった。アオアシシギだろうと思いつつ年齢や換羽状況も気になったため、念のため双眼鏡で観察すると、最初に観察した個体の顔つきがタカブシギの様で頭の中に「?」が溢れた。急いで他の個体を確認すると、全てアオアシシギ第一回冬羽だった。もう一度、謎の個体を確認する。「タカブシギ?いや、アオアシシギとほぼ同じサイズで大き過ぎる。アオアシシギの個体差?いや、そんなはずはない…」と思考が駆け巡り、数秒フリーズした後にやっと「これはオオキアシシギに違いない!」と頭の引き出しからオオキアシシギが引っ張り出された。改めて特徴を確認すると、脚は鮮やかな黄色、初列風切の突出はアオアシシギより長く、背中の模様はコントラストが強くタカブシギの様で、嘴はアオアシシギより直線的で顔つきはタカブシギを連想させた。その後、車が通過した際にアオアシシギと共に干潟の奥へ飛翔して移動したので、最大の特徴である白くない腰も確認出来た。
オオキアシシギはアオアシシギと共に、干潟を駆け巡り、潮溜りで小魚を採餌していた。警戒心はやや強めで、車が通過すると、尾を上下したり、干潟の奥へ走って行ったり、飛翔して小移動するなど、明らかに気にしている行動を示した。しかし、車をやや離れた場所で停めて中で観察をしていると、何度かやや近めを移動する事もあった。オオキアシシギは、1時間ほど観察して潮がやや満ちて来た時に車が通過して、アオアシシギと共にアクセスが出来ない数キロ離れた隣の干潟に移動してしまい、その日はその後姿を見せなかった。
オオキアシシギの国内記録にはいくつか越冬記録があり、長期滞在を期待したが、発見翌日に観察された以降は5日間姿を見せなかった。野付半島の先端付近の干潟は潮が一定以上満ちると干潟が消失してしまうため、日中殆ど干潟が出ない事もあり、丁度発見2日後からその様な条件だった。しかし、姿を消して6日後の19日(日)の午後に同所で鳥仲間が再発見し、その後20.21日と確認する事が出来た。その頃には、一緒にいたアオアシシギは0羽となっており、いよいよ長期滞在モードか?と思っていたが、その後ぱったりと姿を見せず、その後確認される事はなかった。
〈日本におけるオオキアシシギの記録〉
学術誌に投稿するために、過去の記録を調べたので紹介します。思っていた以上に記録は少なく、見つかった写真有の記録は本記録を除くと6個体(もしくは7個体)で、写真のない記録で文献に記載があったものも多くはありませんでした。
発見年 | 場所 | 記載文献 | 備考 |
1964.8 | 宮城県蒲生干潟 | 野鳥誌1964/9.10月号 | 成鳥夏羽後期 |
1983.10 | 愛知県汐川干潟 | 山溪ハンディ7新版日本の野鳥 | 第一回冬羽・越冬記録 |
1996.11 | 埼玉県彩湖 | Strix vol.16 日本野鳥の会 野鳥記録検討会 | |
2004.1 | 茨城県稲敷 | 日本の野鳥650 | 第一回冬羽・越冬記録 |
2016.1 | 北海道長流川河口 | 野鳥愛護会野鳥だより184号 | 第一回冬羽・越冬記録 |
2019.9 | 千葉県 | 千葉県野鳥の会会報誌 | 第一回冬羽 |
2019.10 | 奈良県 | 文献なし(web上に記録あり) | 2019.9の千葉県の個体と同一個体の可能性が高い |
2023.11 | 北海道野付半島 | 本記録 | 第一回冬羽 |
他に写真の有無が不明な記録として、北海道(根室)、石川県、岡山県、沖縄県に1つずつ文献に記載がある記録がある。他に鳥類目録に徳島県、神奈川県の記載がある。そのうち沖縄県の記録は1月の記録で越冬していた可能性がある。
記録の収集にあたってご協力頂いた方々、ありがとうございます。また、他に写真が撮影されている記録をご存知の方がいらっしゃいましたら、コメントか何かで教えて頂けるとありがたいです。