オオキアシシギ発見の記録


2023年11月12日(日)に、野付半島の先端付近の汽水干潟でオオキアシシギ第一回冬羽を発見した。
当日はなんの気なしに野付半島へ足を向けたところ、干潟に何やら中型のシギが3羽走り回っているのが目に止まった。アオアシシギだろうと思いつつ年齢や換羽状況も気になったため、念のため双眼鏡で観察すると、最初に観察した個体の顔つきがタカブシギの様で頭の中に「?」が溢れた。急いで他の個体を確認すると、全てアオアシシギ第一回冬羽だった。もう一度、謎の個体を確認する。「タカブシギ?いや、アオアシシギとほぼ同じサイズで大き過ぎる。アオアシシギの個体差?いや、そんなはずはない…」と思考が駆け巡り、数秒フリーズした後にやっと「これはオオキアシシギに違いない!」と頭の引き出しからオオキアシシギが引っ張り出された。改めて特徴を確認すると、脚は鮮やかな黄色、初列風切の突出はアオアシシギより長く、背中の模様はコントラストが強くタカブシギの様で、嘴はアオアシシギより直線的で顔つきはタカブシギを連想させた。その後、車が通過した際にアオアシシギと共に干潟の奥へ飛翔して移動したので、最大の特徴である白くない腰も確認出来た。

オオキアシシギアオアシシギと共に、干潟を駆け巡り、潮溜りで小魚を採餌していた。警戒心はやや強めで、車が通過すると、尾を上下したり、干潟の奥へ走って行ったり、飛翔して小移動するなど、明らかに気にしている行動を示した。しかし、車をやや離れた場所で停めて中で観察をしていると、何度かやや近めを移動する事もあった。オオキアシシギは、1時間ほど観察して潮がやや満ちて来た時に車が通過して、アオアシシギと共にアクセスが出来ない数キロ離れた隣の干潟に移動してしまい、その日はその後姿を見せなかった。
オオキアシシギの国内記録にはいくつか越冬記録があり、長期滞在を期待したが、発見翌日に観察された以降は5日間姿を見せなかった。野付半島の先端付近の干潟は潮が一定以上満ちると干潟が消失してしまうため、日中殆ど干潟が出ない事もあり、丁度発見2日後からその様な条件だった。しかし、姿を消して6日後の19日(日)の午後に同所で鳥仲間が再発見し、その後20.21日と確認する事が出来た。その頃には、一緒にいたアオアシシギは0羽となっており、いよいよ長期滞在モードか?と思っていたが、その後ぱったりと姿を見せず、その後確認される事はなかった。


〈日本におけるオオキアシシギの記録〉
学術誌に投稿するために、過去の記録を調べたので紹介します。思っていた以上に記録は少なく、見つかった写真有の記録は本記録を除くと6個体(もしくは7個体)で、写真のない記録で文献に記載があったものも多くはありませんでした。

発見年 場所 記載文献 備考
1964.8 宮城県蒲生干潟 野鳥誌1964/9.10月号 成鳥夏羽後期
1983.10 愛知県汐川干潟 山溪ハンディ7新版日本の野鳥 第一回冬羽・越冬記録
1996.11 埼玉県彩湖 Strix vol.16 日本野鳥の会 野鳥記録検討会
2004.1 茨城県稲敷 日本の野鳥650 第一回冬羽・越冬記録
2016.1 北海道長流川河口 野鳥愛護会野鳥だより184号 第一回冬羽・越冬記録
2019.9 千葉県 千葉県野鳥の会会報誌 第一回冬羽
2019.10 奈良県 文献なし(web上に記録あり) 2019.9の千葉県の個体と同一個体の可能性が高い
2023.11 北海道野付半島 本記録 第一回冬羽

他に写真の有無が不明な記録として、北海道(根室)、石川県、岡山県沖縄県に1つずつ文献に記載がある記録がある。他に鳥類目録に徳島県、神奈川県の記載がある。そのうち沖縄県の記録は1月の記録で越冬していた可能性がある。

記録の収集にあたってご協力頂いた方々、ありがとうございます。また、他に写真が撮影されている記録をご存知の方がいらっしゃいましたら、コメントか何かで教えて頂けるとありがたいです。

根室の1年(下半期)

下半期

7/17 落石漁港でカラシラサギを観察

8/10 根室半島でハジロコチドリadを観察

9/5 野付半島コオバシギjを観察

9/6 野付半島でヨーロッパトウネンjを観察

9/14 アラナミキンクロを根室半島で観察

10/1 野付半島でサルハマシギadを観察

10/7 別海町で推定スズガモ×キンクロハジロを発見

10/21 ハシリコタンでウズラシギ、ハマシギ を観察

11/3 標津町でギンザンマシコを観察

ハシリコタンでハマヒバリ、ツメナガホオジロを観察

11/12 野付半島でハジロコチドリを観察

11/23 ハシリコタンでユキホオジロを観察

納沙布岬でチシマウガラスを観察

11/24 標津川河口でカナダカモメadを観察

12/3 ハシリコタンでアメリカビロードキンクロを観察

12/9 野付半島でアビを観察

12/10 納沙布岬でチシマウガラスを観察

12/23 尾岱沼漁港でカナダカモメadを観察

12/24 根室市内でケアシノスリを観察

根室の1年(上半期)

2023年に根室で自分が見てきた鳥をまとめた記事です。好評なら毎年続けてみようと思います。

上半期

1/2 ハシリコタン沖でコスズガモ雄1w?を発見。

1/14 温根元漁港でオオホシハジロ雄1w発見の報をもらい見に行く。

その帰り道に寄った別海漁港でオオホシハジロ3羽を発見(第一発見ではなかったらしい)。

その帰り道に念のため寄った尾岱沼漁港でカナダカモメadを見つける。

1/15 別海漁港で昨日発見のオオホシハジロや堤防にあがるコオリガモを観察する。

2/19 歯舞周辺でコミミズクを観察(この時はコミミズクの目撃情報が根室で多かった)。

2/23 別海漁港でオオホシハジロを観察中に堤防にいるコミミズクを見つける。

2/24 野付半島でハマヒバリを発見。

2/25 野付半島でコミミズクを観察

2/26 花咲港でアメリカビロードキンクロを観察

落石クルーズでアメビロやウミバトを観察

3/12 歯舞クルーズでエトロフウミスズメやコウミスズメを観察


3/18 花咲港でエトピリカとハシブトウミガラスを観察

3/25 ハシリコタンでカナダカモメを発見

3/27 ハシリコタン漁港で25日に見たカナダカモメを再発見

4/8 花咲港でコウミスズメとハシブトウミガラスを観察


根室港でアメリカビロードキンクロを観察

4/9 春別川河口で推定モンゴルセグロカモメ4sとカナダカモメadsを発見


尾岱沼漁港でコスズガモ雄adを発見

4/14 尾岱沼漁港で4/9のカナダカモメを再発見

春別川河口で4/9のコスズガモを再発見

4/16 標津漁港でスズガモ×キンクロハジロ雑種雄adとカナダカモメadsを発見


春別川河口でカナダカモメadsを発見

4/17 標津漁港でカナダカモメ3sを発見

4/22 標津漁港でカナダカモメadsを観察

4/23 西別川河口で推定シロ×セグロカモメadsを観察

標津漁港で推定シロ×セグロカモメ3sを観察

別海漁港でコオリガモadsを観察

4/26 標津漁港でモンゴルセグロカモメadsを発見

西別川河口でモンゴルセグロカモメ2sを観察

4/27 尾岱沼漁港で推定モンゴルセグロカモメ3s、ads2個体を観察


標津漁港でコスズガモ雄ad2個体、雌j1個体を観察


5/15 野付半島でオオジシギを観察

5/17 野付半島でヨーロッパトウネンを発見

5/21 春別川河口でソリハシセイタカシギを発見

5/23 野付半島でシギチのピークを迎える

野付半島で部分白化トウネンを観察

5/24 野付半島ハマシギを観察

6/3 春国岱でマミジロキビタキを観察

根室周辺のおすすめ食事処②標津・尾岱沼・別海

標津
①お食事処 あけみ
価格帯・やや高め(3000〜4000円くらい?)
予約・不明
地元民からの評価が高い居酒屋・寿司屋。まだ行った事はないがお寿司が美味しいらしい。

②食事処しのだ
価格帯・1000〜1500円
予約不用
普通な感じの定食屋。定食は小鉢が多く汁物も付いてきて豪華。小鉢も汁物も美味しいと思う。

尾岱沼
③食事処白帆
価格帯・1000〜2000円
予約不用
尾岱沼の数少ない食事処。夏は希少なホッカイエビを用いたエビ天丼が食べれる。脱皮エビを用いる事で殻ごとあげても柔らかく美味しい。自分はまだ食べた事がないが、お寿司も美味しいらしい。

別海
はまなす
価格帯・1000〜1500円
予約不用
量多めの定食屋。がっつり食べたい時におすすめ。普通に美味しい。

⑤ポークチャップの店 ロマン
価格帯・2000〜3000円くらい?
予約推奨
ポークチャップ発祥のお店らしく人気らしい。ポークチャップは作るのに時間がかかるため予約推奨らしい。別海と言えばというお店だそう。そのうち行きたいな〜と思いつつ行けてない。

⑥居酒屋鮨和
価格帯・3000〜5000円くらい?
予約・不明
地元民からおすすめされたお寿司屋さん。行った事がないのでそのうち行きたい。定番ネタが並んだ出前を一度食べたがそれは割と普通なお寿司だった。季節のネタに期待したい。

根室周辺のおすすめ食事処①中標津編

①知床ジンギスカンそら
価格帯・3000〜5000円
予約推奨(繁忙期でなければ当日予約でもだいたい取れる)
地元民イチオシのお店。炭火の七輪で焼くタイプのジンギスカン。網焼きと鍋焼きの2タイプがあり、注文した肉によって使い分ける(メニューにどちらで焼くか書いてある)。肉は厚切りで食べ応え十分。サイドメニューの個人的おすすめはジャガチー。是非極寒のなか1日中鳥見をした日の締めにお立ち寄りください。

根室花まる中標津
価格帯・2500〜4000円
予約不可(だった気がする)
北海道の魚介の取り扱いが多く、季節によってメニューも変わるので何度行っても飽きない良い寿司屋。グランドメニューでおすすめは炙りホッキ。季節物だとトロにしん(冬)。汁物は全てクオリティーが高いので是非注文してみて下さい。生サーモン(グランドメニュー外)とサーモンがあるのでお気をつけて。生サーモンの方が圧倒的に美味しいです。

③むらかみうどん
価格帯・800〜1200円
予約不可、整理券あり
定休日が多く閉まる時間も早いので行くタイミングが殆どないが美味しいうどん屋。個人的にはカレーうどん推し。スープカレー的に素揚げした野菜が乗っていて食べ応え抜群。あとはチーズ乗せ放題のカルボナーラうどんも是非食べてみてください。自分は遠慮してあまりチーズをかけなかったら店員さんにもういいんですか?と聞かれたので遠慮はいらないと思います笑
中標津空港を利用する際には是非ご検討を。

④レストラン牧舎
価格帯・1000〜1500円
予約なしでも入れる
中標津から車で15分ほど内陸へ向かった場所にあるランチのみのレストラン。探鳥地が近くに無いので探鳥メインの旅にはなかなか組み込むのが難しいかも。店内はおしゃれな雰囲気でカレーやパスタなどメニューは少ないながらに全て美味しい。夏にクルーズと観光を兼ねた旅にいらした際には、開陽台の絶景を見る前に是非お立ち寄り下さい。

⑤ トラットリアナッカリーノ
予約 土日祝日予約不可
価格 夜・2000〜3000
地元民おすすめのイタリアン。夜しか行った事がないが、量はやや多め。特にサラダは3〜4人でシェアすると丁度良い量で、パスタは1人1人前で満足だった。メニューは地元の海産や野菜などを使ったものも多く、どれも美味しかった。

その他紹介
・鮨 わたなべ
予約推奨
価格帯・6000〜12000円
根室には珍しい高級寿司屋。個別のメニューはなくコースのみ。豪華な寿司というよりはシンプルで素材の良さを味わう寿司が出る。ベースは道内産だが道外産もクオリティが高い。若い方には物足りないかもしれないが、クオリティの高いネタをシンプルに食べたい!という方にはおすすめ。

・Fenetre
予約推奨
価格帯・不明
行った事がないが、調べると殆ど絶賛のレビューしかなく気になっているお店。地元民に聞いても味が悪いという話は聞かないので良いと思う。来年は行くつもりですが、もし行った事あるよ!この記事を見て行ったよ!という方がいらっしゃればコメントで教えて下さい。

・おすすめのお土産
東武サウスヒルズやコープ中標津あるるは乳製品の品揃えが良いので、お土産何か買いたいな〜という方は乳製品を買って宅急便で自宅へ送るのがおすすめです。十勝、別海、中標津などなど道東の各地の乳製品が置いてあります。

根室のコスズガモ/スズ×キンクロ雑種探し

スズガモ群の入る主要ポイント

①歯舞漁港
越冬期にまとまった数のスズガモが入る事があります。条件が良いと100以上のスズガモ群を間近で観察出来るのでおすすめのポイントです。2022-2023シーズンにはコスズガモ雌が1ヶ月ほど滞在しました。

根室漁港
春の移動期にまとまった数のスズガモが入ります。まだ実績はありませんが、多分そのうち見つかると思います。
③花咲漁港
春の移動期にまとまった数のスズガモが入ります。2022年の4-5月にはコスズガモ1羽が1ヶ月ほど滞在しました。2023年春にも目撃情報があり、根室でも有数のコスズポイントです。

④ハシリコタン
2022年12月頃には外海側にスズガモ群が滞在し、コスズガモ1羽が混ざっていました。また春の移動期にはハシリコタン漁港付近に数千のスズガモ群が入ります。基本的に遠くて観察は困難ですが、偶に近くに寄っている時は観察可能な距離です。

⑤別海漁港
越冬期は安定して少数のスズガモが入り、沖が荒れた日などには多数のスズガモ群が入ります。また春の移動期にはまとまった数のスズガモ群が滞在し、2023年4月にはコスズガモ1羽が混ざっていました。

⑥春別川河口
春の移動期の終盤に大規模なスズガモ群が入ります。2022年4月にはスズ×キンが、2023年4月にはコスズガモ1羽が混ざっていました。ピークには5000以上のスズガモ群が入り、この規模の群れにしては比較的良い条件で観察出来るので、修行にはもってこいのポイントです。数の割にコスズ率は低い気がします。

⑦尾岱沼漁港
春の移動期に少数のスズガモ群が見られます。漁港内にはあまりスズガモは入らず、漁港南側の堤防から外を見ると、カモが溜まっており、そこにスズガモ、キンクロハジロの小群が入ります。スズ×キン率、コスズ率が高く数の割に穴場です。ここから更に春別川寄りの場所に大きなスズガモ群が入りますが、近くで観察出来る場所がなくもどかしいです。


⑧標津漁港
春の移動期に大規模なスズガモ群が見られます。このポイントは特殊で、基本的にはねぐらとして用いられるので夕方と朝しか観察が出来ません。例外として日曜日や時化で漁が休みの時は船が出ないのでスズガモ群が昼間も多く残っている事があります。標津漁港はキンクロハジロも多く入るからかスズ×キン率が異常に高く、2022春は5個体、2023春は6個体が確認出来ました。またコスズガモは2022春は0でしたが、2023春は5個体が確認出来ました。


根室北部カモメポイントまとめ(2023春)

根室北部のカモメポイント①〜⑩

①標津港(北側)
記録したカモメ・オオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメ、ウミネコ、カモメ、ユリカモメ、セグロカモメ、カナダカモメ、モンゴルセグロカモメ

一言メモ・3月下旬から4月下旬まで渡りのカモメが通過する。天候に関係なく大型カモメが多い貴重なポイント。河口よりの砂入れ場に大型が降りる事もある(スタック注意)。

ワシカモメ3w 4/18

カナダカモメ3w 4/17-18

カナダカモメ成鳥夏羽4/22(クムリーン中間個体)

推定シロ×セグロ雑種3w 4/23

モンゴルセグロカモメ成鳥夏羽 4/26

②標津港(南側)
記録したカモメ・オオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメ、ウミネコ、カモメ、ミツユビカモメ、ユリカモメ、セグロカモメ、カナダカモメ

一言メモ・大型カモメがねぐらとして遠くの堤防を利用する。遠方の堤防にずらっと並んだり、運が良いと近くの堤防に数十羽が降りている事もある。悪天候時は手前の地面に大型・小型がまとまった数降りる。3〜5月はニシン漁が盛んでトラックや漁業者の往来が激しいため注意が必要。荒天の日や夕方の観察がおすすめ。

カナダカモメ成鳥冬→夏羽4/16

推定シロ×セグロ雑種3w 4/23(①と同一個体)

野付半島
記録したカモメ・オオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメ、ユリカモメ、カナダカモメ

一言メモ・越冬時期の12-1月にカナダカモメの目撃情報が多い。野付湾が完全に凍結してしまうとカモメ類は見られなくなる。11-12月はシロカモメが多い。

④尾岱沼港 
記録したカモメ・オオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメ、ウミネコセグロカモメ、カナダカモメ、モンゴルセグロカモメ

一言メモ・水揚げのある日(月〜土)の午前にまとまったカモメが堤防に降りる。荒天の日や早朝以外は漁業者の往来があるため邪魔にならない様に観察する必要がある。ややカモメとの距離があるものの安定して大型が降りる貴重なフィールド。

カナダカモメ(クムリーン中間個体)4/14

モンゴルセグロカモメ3s 4/27

モンゴルセグロカモメ成鳥夏羽

⑤春別川河口(干潟)
観察したカモメ・ウミネコオオセグロカモメ、シロカモメ、ワシカモメ、セグロカモメ、モンゴルセグロカモメ

一言メモ・干潮時に干出した干潟に大型、小型カモメが降りる。ウミネコが増える前(4月中旬より前)は大型が多く、シロカモメやセグロカモメが多く降りるが、4月下旬にはウミネコ、オオセグロ、ユリカモメしかいない。

⑥春別川河口
観察したカモメ・ウミネコオオセグロカモメ、シロカモメ、ワシカモメ、セグロカモメ、カナダカモメ

一言メモ・河口にあるテトラポットの上に大型カモメが休む。何故かカナダカモメ率が高い。

カナダカモメ(クムリーン中間個体)成鳥夏羽4/9

カナダカモメ成鳥冬→夏羽 4/16

⑦別海港
観察したカモメ・オオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメ、ウミネコ、カモメ、ミツユビカモメ、ユリカモメ、セグロカモメ、タイミルカモメ

一言メモ・荒天時に大型カモメがまとまった数降りる。荒天時と通常時の差が大きいポイント。いつかどえらい珍カモメが出る予感がする。

タイミルセグロカモメ成鳥夏羽 4/16

⑧西別川河口
観察したカモメ・オオセグロカモメウミネコ、カモメ、シロカモメ、モンゴルセグロカモメ、ユリカモメ

一言メモ・大型カモメが水浴びをする。また荒天時には大型カモメが大量に降りる。

セグロカモメ×シロカモメ雑種 4/23

モンゴルセグロカモメ2w→s 4/26

⑨ハシリコタン港
観察したカモメ・オオセグロカモメウミネコ、シロカモメ、セグロカモメ、カナダカモメ、ユリカモメ

一言メモ・シロカモメが多いポイント。3月中旬から4月中旬までシロカモメが常に2桁以上見られる。

シロカモメ成鳥冬→夏羽 4/8

カナダカモメ成鳥冬→夏羽 3/27

⑩ハシリコタン
観察したカモメ・オオセグロカモメウミネコ、シロカモメ、カナダカモメ

一言メモ・あまりカモメの数は多くないが、テトラポットにシロカモメやオオセグロカモメが降りる。

カナダカモメ成鳥冬→夏羽 3/25

根室北部2023春カモメまとめ


3/25から4/27まで約1ヶ月間、根室北部を通過するカモメを観察してみました。思っていた以上にカナダカモメが通過していて興味深い結果となりました。

〈各種の渡りの規模感〉
セグロカモメはやはりかなり少なく、よく見る日でもぎりぎり10羽いく程度でした。多いのはシロカモメで、3月中旬から下旬にかけて風蓮湖や野付湾に沢山やって来て、そこから4月が終わるまでダラダラと小、中規模の渡りが続きました。ワシカモメは多くなく、4月を通して各漁港に2.3羽居るか居ないかという感じが続きました。カナダカモメは3月下旬から4月中旬まで定期的に出て、最終的に6羽が見れました。北風の日が出やすい傾向な気がしますが、まだまだ母数が少ないので何とも分かりません。モンゴルセグロカモメは4月下旬の強い南風の日の直後に7羽が観察されました。普段から根室北部を通過しているのか、偶々南風に流されて来たのか、来年以降に継続してカモメを見て検証したいです。

カナダカモメ
1個体目 成鳥冬→夏羽 3/25.27
25日はハシリコタンでオオセグロカモメ、シロカモメ数羽と共にテトラに降りていた。27日は雨が降るやや風が強い日にハシリコタン港に降りていた。虹彩は淡色で、初列は典型的なカナダパターンの個体。



2個体目 成鳥夏羽 4/9.14
9日に春別川河口のテトラに降りているのを発見し、14日に尾岱沼漁港に居るのを再発見した。初列はp10が真っ白でp9の白色部は外弁まで達しており黒色が入る初列はp10-6の5枚と、クムリーン寄りのパターンだった。体格はかなり華奢で、パッと見のシルエットは小型カモメの様な印象を受けた。
右p6が脱落していたため、他のどこかで見つかっていれば渡り経路が分かりそうなので、もし見覚えがある方はコメント頂けるとありがたいです。




3個体目 成鳥冬→夏羽 4/16
北風の強い雨の日に標津港の堤防に大型50羽ほどが降りていて、その中に混ざっていた。典型的なカナダという感じで、小柄で、斑はぼやっと、脚は短く、目に入った瞬間にカナダと分かった。初列はやや黒色部が多い個体で、p5までがっつりと模様が入っていた。結局、この時しか出会わなかったので、風よけで一時的に港に入ったのかもしれない。



4 個体目 成鳥冬→夏羽 4/16
3個体目と同日に、こちらは春別川河口のテトラに大型10羽ほどに混ざり降りていた。やや頭でっかちな印象を受ける個体で、左目を怪我しているのか目が常に半開きだった。発見直後に飛んでしまい戻って来なかった。飛翔時の翼は撮影し逃してしまった。

5個体目 第3回冬→夏羽 4/17.18.27
17日の標津港で大型100羽ほどに混ざり降りていた。この個体はかなり悩ましい個体で、もしかしたらカナダでないかもしれないが、他の選択肢があまりにも可能性が低いためカナダとした。
前日の昼にオホーツクの湧別港で見つかっており、1日で200kmを渡って来たらしい。また標津港での発見から10日ほど経った27日に再び同所に現れた。今度はどの辺りまでウロウロして来たのだろうか。

この個体の特徴を挙げると、①色味はセグロよりも薄く青みがかっており、典型的なカナダの色味とは異なる②初列のパターンは外弁と内弁にコントラストがありカナダ的なストライプが見られる。内弁は白というより灰色がかっている③尾羽には黒味の強い黒帯模様が残っている④初列風切の突出は長く尾羽からp7-10が出ている⑤嘴がやや長めだがゴツい感じはない⑥アイリングは紫がかったピンクでカナダやワシ的⑦体格は典型的カナダに比べるとがっしりしている⑧脚は短く見える、という感じで①⑦以外はカナダの特徴と一致する。印象としてはワシが絡む雑種にも見えるが、背の色味からワシ雑種なら片親はワシと同等かそれより薄い色のカモメで、そう考えるとスミスやネルソン(スミス×シロ)が片親と推定出来る。これは知る限り記録がない雑種で、存在したとしても日本に来る可能性はかなり低いため、この個体はカナダカモメとした。
(かなり難しい個体で、3日ほど考えた末に色々な方に意見を伺いこの様な結論になりました。またこの個体の考察を別の記事で書くかもしれません。)
↓16日に湧別で撮影された写真(A氏提供)

以外標津港での写真



6個体目 成鳥夏羽 4/22
標津港に大型100羽ほどに混ざり降りていた。昼前から夕方までずっとほぼ同じ場所で寝ていた。長旅で疲れていたのかもしれない。この日以降は全く見かけなかった。2個体目に非常に似ており、華奢で小型カモメの様なシルエットで、ほぼ完全に夏羽に換羽していた。初列パターンはp10に小さい黒色模様があるものの、クムリーンパターン的だった。




モンゴルセグロカモメ
1個体目 成鳥夏羽 4/26
南風がとても強い雨の日に、標津港北側の空き地に大型100羽ほどに混ざり降りていた。体格、嘴の黒斑、突出、ムーンの狭さ、初列の黒色部の広さなど文句の付けようのないモンゴルセグロカモメだった。初列風切の黒色部はp3まで見られた。


2個体目 第二回夏羽 4/26
こちらも上の成鳥と同じ日に見つかった。こちらは午後の最も風が強い時間帯に西部川河口をオオセグロ100羽ほどに混ざり飛んでいた。コントラストが強く尾羽の黒帯が狭く、モンゴルの特徴がよく分かる個体だった。
他にも2羽、西別川河口にモンゴルセグロ2wに見える個体がいたが、翼はおさえられなかった。



↓他2個体の2年目

3個体目 第三回夏羽 4/27
早朝の尾岱沼港の堤防にオオセグロ、シロカモメなど30羽くらいの大型と共に降りていた。
尾羽は黒帯が残り、初列の黒色部はp4までの7枚。
他にも共にモンゴル成鳥と思われる個体が2個体見られた。


↓モンゴル成鳥と思われる成鳥2個体

雑種カモメ
推定シロ×セグロ 3年目冬羽 4/23
4/23の早朝に標津港の堤防に大型30羽ほどに混ざり降りていた。その時は後ろ姿しか見えず、ワシカモメか大きいカナダカモメだろうかと思ったが、夕方に港北側に大型100羽ほどに混ざり降りていて再度見る事が出来た。翼のパターンはワシカモメ的だったが、後頭や雨覆の斑が鋭くワシカモメではないと思われる。嘴の黒色もワシ的でなく、先だけが黒い。背中の色味がセグロ並だった事からワシ×オオセグロも考えづらいため、セグロ寄りのシロ×セグロ雑種と考えられる。多くのシロ×セグロ雑種3wは虹彩が淡色だが、一部暗色の個体もいるらしい。


推定シロ×セグロ 成鳥夏羽 4/23
4/23の午後に西別川河口でオオセグロ30羽ほどと水浴びをしていた。初列パターンはカナダ的だが、体格はオオセグロ並で嘴もがっしりとしておりカナダではないと思われる。背中の色味はセグロより薄く見えた。虹彩が暗色なのが引っかかるが、暗色なシロ×セグロもいるためシロ×セグロと考えた。



その他
タイミルセグロカモメ 第3回夏羽
北風の強い雨の日だった4/16に、別海港にて大型200羽ほどに混ざっていた。背中はオオセグロよりやや薄い程度で、ムーンは小さく、ミラーはp10に小さいものが1つ見られた。ホイグリンとの境が難しいが、体格が小型カモメ的な典型的ホイグリンとは言えずタイミルとした。この様な個体は、根室北部ではあまり見ない。

ワシカモメ
第一回夏羽


第二回夏羽

第四回夏羽



成鳥夏羽

シロカモメ
第一回冬→夏羽

第二回冬→夏羽


成鳥夏羽

希少カモ雑種の記録

オナガガモ×ヨシガモ 琵琶湖2019.2
http://gasagasa.dameda.net/shucho/2019/190217-1.htm

マガモ×ヒドリガモ 千歳川2016.4
https://blog.goo.ne.jp/mushi_2010/e/ba5d22a3feab4c4fd4beb0b40a9f2c36

ヒドリガモ×トモエガモ 
大阪2014.1
https://blog.goo.ne.jp/mushikui-2502/e/eef81184f844cd145cc7f98a6c632993
石川2023.3
https://twitter.com/flyingsunbird/status/1635231542493728768?s=46&t=ecU2iTs7fSiSxIJVKupcXg

ヨシガモ×トモエガモ 関東2015.11
https://lagopus.seesaa.net/article/201512article_8.html

ハシビロガモ×ヒドリガモ 東海2016.4
https://twitter.com/solitary_snipe/status/721313250554458112?s=46&t=ecU2iTs7fSiSxIJVKupcXg

ハシビロガモ×オカヨシガモ 
千葉2011.3
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo/70/1/70_61/_article/-char/ja/
大阪府2022.1

トモエガモ×コガモ 新潟2022.2 https://twitter.com/cikatic/status/1498186520297353219?s=46&t=ecU2iTs7fSiSxIJVKupcXg

ヨシガモ×マガモ 
愛知県2022.3

関東2023.1
https://twitter.com/rio_birds0123/status/1643098978530238465?s=46&t=ecU2iTs7fSiSxIJVKupcXg

オカヨシガモ×マガモ
大阪府2024.1

ハシビロガモ×マガモ 関東2023.2

メジロガモ×ホシハジロ 関西2023.2

アカハシハジロ×ホシハジロ 兵庫2018.3
https://www.love-birds.net/2018-01-21/

ミコアイサ×ホオジロガモ 
北海道2004
https://starling.dyndns.org/~birdkitahiro/hokkaido/hyb/hyb-02.htm
道東2023
https://www.marimo.or.jp/~nemu_nc/newsletter/2023/230506.pdf

ミコアイサ×ウミアイサ 道東2015.1
http://kitanosaijiki.livedoor.blog/archives/10534.html

ヒメハジロ×ホオジロガモ 
十勝2010.3
https://blog.goo.ne.jp/torikichi14/e/c8baba000f05b1460424700e7b7d8150
北海道2023.1

ヒドリガモ×オカヨシガモ
関西2023.12

推定メジロガモ×オカヨシガモ
関西2024.1
https://x.com/fu_ku_ma_ru_/status/1748337001542352978?s=46

アメリカビロードキンクロ

近年、根室周辺を中心にアメリカビロードキンクロの観察例が急増しています。例に漏れず、自分も昨年4月からの1年間で7個体を撮影出来ました。


2022/4/25 根室


2023/2/26 花咲港


2023/2/26 花咲港


2023/2/26 落石クルーズ(左・アメビロ雄成鳥、右・アメビロ雄1年目)


2023/4/8 根室港(左)


2023/4/9 ハシリコタン沖

〈アメビロとビロキンの比較〉(上・アメビロ、下・ビロキン)
・雄成鳥

〔両者の識別点〕

アメリカビロード ビロードキンクロ
頭部の形 前頭部が高く角張る 前頭部が低く額がなだらか
嘴の瘤 低い 高い
嘴の模様 縁に黄色は出ない 縁が黄色い
脇の色 褐色

〔頭部の比較〕

頭部の形は角度によってやや分かりづらい。嘴の模様は、縁に黄色が出るか出ないかだけでなく、ビロードキンクロは赤一色に縁に黄色が出るのに対し、アメリカビロードキンクロは根元側はオレンジで先に行くにつれてグラデーションで赤紫色に変化する。嘴の瘤は分かり易い識別点だが、ビロードキンクロの2年目の個体は瘤が低いため注意が必要。


・雄1年目

・雌

キレンジャク雌雄識別

雄成鳥 雌成鳥
尾羽 黄色帯が太い 黄色帯が狭い
初列先端 白色の羽縁の幅が広い 白色の羽縁が狭い又は見られない
喉の黒色斑 境界が明瞭 境界が不明瞭

*幼鳥は雌雄共に初列先端の羽縁がない/明瞭に出ない傾向にあるそうです。
*尾羽の黄色帯と初列先端の羽縁の白は雌雄でオーバーラップがあるので、傾向があるという認識で良いと思います。


上・雄成鳥、下・雌成鳥

上・雄齢不明、下・雌成鳥

成幼判定に関しては断言出来るものではなく、あくまで推定の域を出ません。



参考文献・ヨーロッパ産スズメ目の識別ガイド

オオホシハジロ 2022-2023シーズン@根室

①歯舞漁港 12/28-2/26 雌第一回冬羽、2/11-2/17雄幼羽→第一回生殖羽、2/18、2/26雌成鳥

12/28発見当初は、ホシハジロ10羽程、コスズガモ1羽と漁港の隅で寝ていました。

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他の日も群れにはキンクロハジロが入ったり、ホシハジロが増えたり減ったりと変化はありましたが、コスズガモとオオホシハジロは常に同じ場所にいました。

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この個体は寝ている時間が長く、観察しに行くとどの時間帯でも常に寝ていました。

 

1/21に訪れたところ、コスズガモ、オオホシハジロがいた群れは見られず、コスズガモだけが単独で見られました。

1/23には知り合いがオオホシハジロが戻っている事を確認し、その後ホシハジロも合流し、再び小規模の群れに戻った様です。

その後、雄第一回冬羽と雌成鳥が合流した様でしたが、自分は2/17に雌成鳥を確認したのみで雄第一回冬羽は見れませんでした。

2/24-25には雌幼鳥と成鳥が隣の珸瑤瑁漁港へ移動していましたが、氷結したため26日には歯舞漁港へ戻っていました。

2/26 歯舞漁港

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②温根元漁港 1/12-1/18 雄第一回冬羽

知り合いから、1/12に温根元漁港に雄が入ったと連絡を頂き、1/14に見に行きました。

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ホシハジロ、スズガモの10羽ほどの混群と共に行動していました。スズガモ、ホシハジロと比べると大きい事がよく分かりました。

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この時点で、漁港の半分ほどに氷が張っていたため、凍結して抜けてしまうのが心配でしたが、予想通り凍結して直ぐに抜けてしまった様です。

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腹側には幼羽が見える事から第一回冬羽だと分かります。
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③別海漁港 1/14-1/25 雄成鳥2羽、雌成鳥1羽、雌幼羽→第一回生殖羽1羽、1/21-1/31 幼羽→第一回生殖羽、2/22-3/3 雄成鳥2羽、雌幼羽→第一回生殖羽1羽(2/22-3/8)

 

1/14発見当初は、スズガモ、キンクロハジロホシハジロマガモ、クロガモ、コオリガモ、ウミアイサなどの混群100羽ほどの群れに雄1羽、雌1羽を見つけました。天気は吹雪で、視界が悪く暗かったですが、雄の白い背中で存在に気づき、よく見ると雌も隣に見つかりました。30分程観察しましたが、天気も良くならないのでこの日は切り上げました。

しかしその後、連絡した知り合いが見に行ったところ、その時に撮ったという写真を送ってもらうと雄1羽、雌2羽が写っていました。

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1/15に再訪してみると、雄2羽、雌2羽がいる事が分かりました。昨日には堤防の裏に隠れていたのか、まさか1箇所に4羽入っているとは思いせんでした。

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雄成鳥2羽。白い背中が目立ちます。
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左から雌第一回冬羽、雌成鳥、雄成鳥

 

1/21に様子を見に行くと、更に雄第一回冬羽が加わって5羽になっていました。温根元の個体が抜けた直後だったので、あの個体が移動してのかもしれません。

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1/22は漁港内が結氷しており、オオホシハジロは漁港の入り口付近の外海に移動していました。それ以降は基本的に漁港内は結氷していましたが、知り合いの話によると船が出て、氷が割れると漁港内に入って来ていた様です。

1/31に様子を見に行くと、漁港外の外海でも見つからず、1羽だけ(雄第一回冬羽)漁港外のテトラポット付近で確認出来ました。

 

その後3週間ほどはオオホシは見られませんでしたが、2/22に3羽が別海漁港に帰って来ました。

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3/3には過去最短距離で観察出来ました。

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④花咲漁港 1/21 雄幼羽→第一回生殖羽1羽

自分か直接観察した訳ではないですが、雄1wが1日だけ入っていた様です。

 

⑥珸瑤瑁漁港 2/24-2/25 雌成鳥1羽、幼羽→第一回生殖羽1羽

歯舞漁港の雌2羽が2日だけこちらの漁港に移動していました。しかし漁港が氷結して直ぐに歯舞漁港に戻っていきました。

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⑦標津漁港 3/28-30 

標津漁港を塒としていた様で、夕方時のみ確認出来ました。

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ケアシノスリの成幼雌雄推定*改訂版

 2022-2023シーズンはケアシノスリが全国的に多く、2023-2024シーズンは道北、根室周辺で非幼鳥の渡来が多く、年齢推定・雌雄識別に興味が出たため文献で調べた事に自分なりの見解も加えてまとめてみました。

 ケアシノスリについて興味を持ち、snsやブログ記事を漁っている時に気になったのですが、ケアシノスリの幼鳥を尾羽の模様から雌雄識別しようとしている方をしばしば見かけました。今のところ、幼鳥は模様での雌雄識別が出来ないとされています。成鳥の雌雄識別点は幼鳥には当てはまらないので、まず成鳥か幼鳥かの識別、成鳥であれば雌雄識別、の順に行うと良いです。成鳥の雄と雌は性差が出るため、雌雄どちらか分かる事が多いです(一部悩ましい個体がいます)。
 以下、まだ換羽を行っていない1年目の個体を幼鳥、換羽を経験した2年目以上の個体を成鳥と呼ぶ事にします。

( *改訂前は2年目個体を分けて考えていましたが、旧羽が幼羽か成羽か判断するのは非常に困難なため、2年目か3年目以上かを判断する事は至近距離で尾羽の旧羽を見れない限り難しいと思われます。)

Step1〈成鳥と幼鳥の識別〉
全ての個体に当てはまる訳ではありませんが、当てはまる事が多い特徴を表にしてみました。

幼鳥 成鳥
虹彩 淡色 暗色
②尾羽 横帯が不明瞭 横帯が明瞭
③翼上面 初列風切基部が白い 一様に灰色
④翼下面 翼端の黒帯が薄い 翼端の黒帯が濃い
⑤換羽 旧羽がない 旧羽が見られる

①〜④の特徴からどちらか片方に3つ以上当てはまる場合はその可能性が高いです。旧羽が見られる場合は確実に成鳥と言って良いです。旧羽が見られない成鳥もいるので、総合的な判断が必要です。

Step2〈幼鳥・成鳥の各特徴の個体差の把握〉
虹彩
虹彩は幼鳥の場合は淡色な傾向があります。しかし暗色気味になる個体も少なくないので注意が必要です。しかし淡色な成鳥は自分の知る限り見た事がないので、淡色の場合は幼鳥と思っても大丈夫だと思います。
・幼鳥の虹彩バリエーション
虹彩が淡色だと言われている幼鳥ですが、結構個体差があります。文献ではかなり暗色の個体も掲載されていました(ワシタカ・ハヤブサ識別図鑑)。

・成鳥の虹彩
光の当たり方や個体によって多少変わりますが、暗褐色〜黒褐色に見えます。

②尾羽
幼鳥は尾羽の横帯が下面では薄く、上面では境界が不明瞭で太くなる傾向があります。しかし稀に成鳥の様な尾羽を持つ幼鳥もいる様なので注意が必要です。
・幼鳥の尾羽下面
幼鳥の尾羽下面の模様は淡く不明瞭な傾向にあります。

・幼鳥の尾羽上面
幼鳥の尾羽上面は太くて境界が不明瞭な横帯と、何本か不明瞭な細い横帯が組み合わさった様な模様をしている事が多いです(この不明瞭な細い横帯の本数は雌雄に関係ないと思われます)。不明瞭な細い横帯は見られない場合もあります。下面に比べて色が濃く境界がはっきりしている個体が多いです。左上の個体の様に一見成鳥との判別が難しい個体もいます。

・成鳥の尾羽下面
雄成鳥4個体(左列)と雌成鳥4個体(右列)のバリエーションです。
成鳥の横帯は色が濃く境界がハッキリとしている傾向にあります。また、基本的には雌は横帯が1本、雄は2本以上の傾向が強いと思っています。しかし、腹部の模様によって推定した雌雄と尾羽の傾向が合わない場合もあり、その場合は雌雄どちらか非常に悩ましいです。

・成鳥の尾羽上面
雄成鳥5個体(左列+右列1番下)と雌成鳥3個体(右列上から3つ)のバリエーションです。雄成鳥については、上面も下面同様に横帯は色が濃く境界がハッキリとしている傾向にあります。一方雌成鳥は横帯が下面に比べて太く、根本側の境界が不鮮明になる傾向があると思っています。雄成鳥については、若い個体は横帯の境界が不明瞭だったり、滲みが見られ、年齢と共に模様が明瞭になると共に横帯の数が増えると考えています。
また、上尾筒の斑が太い傾向にあるのも成鳥の特徴と考えています。

③翼上面
幼鳥は初列風切基部が白く色が抜ける傾向にあります。しかし成鳥も一部で白く色が抜ける個体がいるので注意が必要です。
・幼鳥の翼上面
幼鳥の初列風切上面は模様がハッキリと出ずに基部の色が白く抜ける傾向にあります。

・成鳥の翼上面
成鳥は翼上面が一様に灰色/暗褐色な傾向がありますが、初列風切の基部がやや薄くなる個体は珍しくありません。特に右列1番上の個体は一見幼鳥を疑うほど白く抜けていました。成鳥は初列風切に旧羽を残している事が多く、それを確認出来れば幼鳥が否定されるため、幼鳥と成鳥を見分ける重要な識別点になり得ます。旧羽を見分けるには色味(旧羽は褐色が強く見えたり、白っぽく見える)と擦れ具合を見ます。

④翼下面
・幼鳥の翼下面
幼鳥の翼下面は翼端の黒帯が淡い傾向があります。

・成鳥の翼下面
成鳥は翼端の黒帯のコントラストが強くハッキリと出ます。


Step3〈雌雄推定〉
基本的に成鳥の雌雄識別は腹部から脚にかけての模様を見て行います。
よく言われる雌雄識別点に「尾羽の横帯が1本だと雌、2本以上だと雄」というものがありますが、傾向的に当てはまる事が多いだけで、横帯が2本以上の雌が存在すると思っているので、そこだけで判断は出来ないと思います。また雄の若鳥では尾羽の横帯が1本に見える個体がおり注意が必要です。

成鳥の雌雄の特徴【腹部】
・雄成鳥の腹部から脚にかけての模様
横斑が見られる傾向があります。腹部から脚にかけて横斑が出る個体もいれば、縁辺部にだけ横斑が出る個体もいます。

・雌成鳥の腹部から脚にかけての模様
模様が一様な傾向にあり、横斑状は見られても基本的には脚周りだけと考えています。

成鳥の雌雄の特徴【尾羽の黒帯】
〈尾羽下面〉
・雄成鳥
横帯が2本以上出る傾向にあります。しかし1本しか出ていない様に見える個体もいるので注意が必要です。

・雌成鳥
基本的に境界がはっきりとした太い横帯が1本見える傾向にあります。若い個体は細い事もありますが、境界は明瞭です。

〈尾羽上面〉
・雄成鳥
大体下面と同じ印象です。若い個体は境界に滲みが出たり、模様の完成度が高くないのではと思っています。

・雌成鳥
雌は下面の横帯より太く見える傾向があると思っています。雌成鳥の尾羽上面を鮮明に撮影すると、黒くはっきりとした横帯からその付け根側にやや薄い滲んだ様な模様が延長している事が多いです。その滲んだ様な模様は下面からは見えず、上面だけに見えているのかなと思います。

〈その他〉
他にも雄成鳥は喉から胸にかけての斑が太く出る傾向にありますが、雄でも細い個体や雌でも太い個体がいるため、最終的には総合的な判断が求められます。基本的には腹部から脚にかけての模様を見れば推定出来る事が多いです。
またサイズによっての雌雄推定も可能で、2羽のケアシノスリが並んでいた時に明確に体格差があれば、大きい方が雌、小さい方が雄と推定出来ます。

〈雌雄推定の悩ましい個体〉


一見すると雌成鳥に見えるが、よく見ると尾羽の横帯は下面、上面共に2本に見える。



こちらも腹部の模様は雌成鳥に見えるが、尾羽の横帯は下面、上面共に2本見える。



自分は、色々調べたり実際に観察した結果、以上の点を考慮してケアシノスリの成幼雌雄推定をしています。ここがおかしいのではないか、ここが分かりづらいなどご意見ありましたらコメント頂けると幸いです。参考文献はフィールドガイド日本の猛禽類vol.4ノスリ、BIRDER2014.2月号YoungGunsの野鳥ラボ、などです。また写真を提供してくれた皆様ありがとうございます。

次の記事では、実際の個体をどの様な点から成幼雌雄推定をしたのかという内容や、年齢推定(ほぼ妄想だと思ってください)で考えた事を掲載した記事を更新しようと思います。